AES基礎音響セミナー2025

梅雨明け夏本番の候、皆様ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。

これまでご好評頂いてますAES「基礎音響セミナー」も、本年の開催を持ちまして第16回を迎えることとなりました。これも皆様方のご支援と講師を務めて来られた方々のご協力の賜物と感謝申し上げます。

さて今回のAES基礎音響セミナーは、これまで同様に幅広く基礎から学んで頂ける充実した講義を引き続き実施するとともに,AoIPに関する講義をマスタークラスとして実施することになりました。各分野にて第一線で活躍されている講師の方々により構成され、実践に結びつく生きた理論を知ることが出来ます。音響理論の基礎固め、必要とする専門知識のスキルアップにご活用頂ければ幸甚です。

実施日

2025 年 8 月 30 日 (土)・31 日 (日)

会場

東京藝術大学 千住キャンパス東京都足立区千住1-25-1

セミナー概要・時間割

8月30日(土)

大会場(第一講義室)

小会場(第三講義室)

スタジオ

9:15〜9:45 受付
10:00〜12:00

電気音響の基礎(田村良隆)

音の基礎(星和磨)
13:00〜16:00 スピーカ入門(小谷野進司) デジタル信号処理の基礎(渡邉祐子)2hr
デジタル信号処理の活用例(鈴木久晴) 1hr
 
 

8月31日(日)

大会場(第一講義室)

小会場(第三講義室)

スタジオ

10:00〜12:00 マイクロホン入門(小野一穂) 音の心理評価入門(丸井淳史) ステレオ録音入門★(亀川徹)
13:00〜16:00 室内音響入門(中原雅考) 聴覚と音知覚の基礎(西村明)
(アーカイブ再生)
16:00〜18:00 AoIP入門IPの基礎とプロトコルの理解(木村貴史,井上聡)
マスタークラス

★スタジオ/録音調整室の定員の都合により20名までとさせていただきます。参加希望者には受付にて先着順に整理券をお配りします。


受講費

一般 AES日本支部会員 15,000円(税別)
一般 非会員 36,000円(税別)
学生 AES日本学生支部会員 2,700円(税別)
学生 非会員 12,000円(税別)

本セミナーは会員向けサービスの一環です。非会員の方でセミナーの参加を検討されている方は、これを機に AESの会員登録をご検討いただけますと幸いです。なお、当日までに入会申込をしていただける場合は、会員価格でお申し込みいただけます(入会申込を行ったことがわかる書類などを受付にてご提示ください。日本支部HP内の入会案内ページ本部の会員登録ページ)。


申込み方法

下記サイトよりお申し込みください。申し込み後に表示されるページならびに受付確認メールに記載されたURLより、PayPalによる受講費のお支払いをお願いいたします。

https://ws.formzu.net/dist/S42077970/

賛助会員

AES日本支部賛助会員企業様には、賛助会員特典としてセミナーへのご招待枠(賛助お申し込み1口あたり2名)を確保させて頂きます。お申し込み方法は各企業ご担当者様にメールにてご案内いたします。ご招待枠を超えて申込があった場合は、非会員と同様に参加料をお支払いいただきます。
 

講義内容

音の基礎 講師:星和磨(日本大学)

音はなぜ―大きく・小さく、高く・低く、綺麗に・汚く―聞こえるのでしょうか。目でみえない音を数や式といったフィルターを通してみると意外と理解しやすいものです。この講義では、これらの項目と、周波数・波長・音速・音圧・レベル・周波数特性・A特性・オクターブバンドレベルといったキーワードとが対応づくことを目指します。さらに周波数分析の基礎についてもわかりやすく解説します。

予定講義内容
・音が伝わるしくみ
・音の大きさと高さ
・音圧レベルとデシベル
・周波数特性とA特性補正
・倍音と和音
・周波数分析のしくみ

 

電気音響の基礎 講師:田村良隆(スタジオイクイプメント)

エンジニアを目指す方に、知っておくと便利な電気の基礎理論を解説します。作業に於いて、いろんなトラブルや動作状況が,どのように電気理論で説明できるかという見方で解説します。

予定講義内容
・電気の基礎: オームの法則、交流と直流、電源、グランド
・回路の基礎: 直列と並列、インピーダンス(ロー出しハイ受けなど)、レベルについて、バランス伝送とアンバランス伝送
・応用編: ノイズについて(ノーマルモードノイズ,コモンモードノイズ)、シールドについて(静電・磁気・電磁シールド)

 

デジタル信号処理の基礎       講師:渡邉祐子(東京電機大学)
デジタル信号処理の活用例      講師:鈴木久晴(エヴィクサー)

デジタル信号処理の基礎(前半2時間)
“デジタル信号処理“は大きく分けると信号の制御と分析に役割を分けることができます。これらを前提にして、音響技術の初心者を対象に、音をデジタル化する仕組みや利点・欠点、決まりごとについてわかりやすく解説します。

予定講義内容
・アナログ信号のデジタル化(標本化,量子化,符号化)
・デジタルオーディオにおける基礎事項(サンプリング周波数,量子化ビット数,データサイズ)
・オーディオ信号の周波数解析
・デジタルオーディオ処理

デジタル信号処理の活用例(後半1時間)
デジタル信号処理の活用事例として、音響透かしと音響フィンガープリントを商業的に応用した事例について様々な事例を紹介いたします。通信技術としての側面とコンテンツ保護技術としての側面から解説いたします。

 

聴覚と音知覚の基礎 講師:西村明(東京情報大学)

オーディオエンジニアにとって音を分析的に聴く行為から逃れることはできません。では、我々の聴覚は音をどのように捉えているのでしょうか?音という物理的な現象は、聴覚器官と脳の働きによって、心理的な現象として知覚されます。聴覚の仕組みを簡単に説明した後、音の物理的特徴と心理的な知覚現象との対応関係について、オーディオエンジニアリングに特に関係すると思われる話題をいくつかとりあげて、実際に音を再生して体験してもらいながら解説します。

予定講義内容
・耳もやっぱり歪む: 聴覚器官の概要,差音,結合音,主観倍音
・耳の感度は?: 音圧レベルと音の大きさ,ラウドネス
・存在するはずの音が聴こえない: 臨界帯域,周波数マスキング,時間マスキング
・音の空間的印象を規定する要因: 方向知覚,先行音効果,拡がり感と見かけの音源の幅,高さの方向と拡がり

 

マイクロホン入門 講師:小野一穂(NHK財団)

マイクロホンの動作原理や指向特性、等価雑音などの基本概念について、音響の初心者を対象に解説します。

予定講義内容
・マイクロホンの基本構造、感度・雑音、指向性
・録音用マイクロホン、さまざまなマイクロホン
・マイクロホンの指向性による音の違い
・ダイナミックマイクやコンデンサーマイクなど、マイクの種類による音の違い

 

室内音響入門 講師:中原雅考(ソナ / オンフューチャー)

オーディオ・エンジニアリングに必要とされる室内音響学の理論的な考え方の基礎を概説します。音場の形成とその再現、室内音響の三分野「波動音響」「幾何音響」「統計音響」とオーディオンエンジニアリングの関わりに関して基礎的な事項を解説します。これまでに音響学を学んだことのない方々が、音の振る舞いを理論的にイメージでき、身につけた知識をオーディオ・エンジニアリングの現場で活用できることを目標としています。また、モード現象の体験や音響インテンシティ測定による音場再現などの小実験を時間の許す範囲で行います。

予定講義内容
・音場の誕生と復元
・部屋がもたらす響き
・中高域の響き(幾何音響学,統計音響学):反射音と聴感,コムフィルタ,残響理論,臨界距離
・低域の響き(波動音響学):ルームモード,モード合成と周波数特性
・音響実験(モード体験,pとuの復元による立体音響再現)

 

音の心理評価入門 講師:丸井淳史(東京藝術大学)

音の評価のために行われる音響心理実験では、どんなことに気をつけなければならないのでしょうか?思わぬところで出くわす落とし穴を紹介し、心理音響と音の評価実験の基礎を身につけて頂きます。

予定講義内容
・実験の目的
・研究の流れ(研究目標の設定から実験を経て報告まで)
・評価語・評価尺度
・バイアスと文脈効果

 

スピーカ入門 講師:小谷野進司(KOYANO Sound Lab.)

音響技術やオーディオ機器の設計等に携わる初心者を対象に、スピーカの基礎からキャビネットの設計までを実例を示しながら学んで頂きます。

予定講義内容
・電気音響等価回路の基礎
・動電型スピーカの動作
・スピーカの種類
・ホーンスピーカ
・スピーカシステム
・キャビネット設計の実際

ステレオ録音入門 講師:亀川徹(東京藝術大学)

ワンポイントステレオ録音のおこなう上でのマイクロホンの位置の検討方法について、実際にスタジオでの実習を交えながら解説します。

予定講義内容
・主なステレオ録音方式の概要
・レコーディングアングルを考慮したマイクロホンセッティングの考え方
・クリティカルディスタンスと直接音と間接音のバランスについて
・実際の録音と試聴

 

AoIP入門 IPの基礎とプロトコルの理解   <マスタークラス>
              講師:木村貴史(レスター), 井上聡(ONZU)

近年、MADIやDANTEなどをはじめとした規格が整備された結果、急速にAoIP(Audio over Internet Protocol)技術が普及しました。それ故、伝送に関する様々なトラブルに遭遇することも少なくありません。そこで本マスタークラスでは、講義形式でAoIP技術の基礎事項を学ぶとともに、各プロトコルの理解を深めるための解説を行います。

予定講義内容
・そもそもAoIPとは?
・オーディオ技術者のためのネットワーク基礎
・PTPの基礎
・各プロトコルの特徴(Dante、AVB、Ravenna、ST2110)
・適切なネットワークスイッチの選定